ゴーストライターに論文を書かせる

論文を書くときに,著者として誰の名前を入れるかに頭を悩ませることがあります。他の人が書いた論文を見ていても,「どう考えてもこの人はこの研究に関係なさそうだけど,偉いから入っているんだろうな。」という例がたまに見られます。論文に貢献していないのに名前を連ねる著者のことを,オノラリーオーサー(honorary author)やギフトオーサー(gift author)と呼ぶのだそうです。


日経メディカルオンラインに気になるニュースがありました*1

JAMAのジョセフ・ウィスラー氏のグループは,臨床医学領域でインパクトファクターの高いAIM,JAMA,Lancet,Nature Medicine,NEJM,PLoS Medicineの6誌について,2008年に発表された論文(原著論文,総説,エディトリアル)から無作為に抽出した900本の著者,896人に連絡を取り,一定の基準に沿って,ゴーストオーサーとオノラリーオーサーを同定した。その結果,ゴーストオーサーの割合は7.8%,オノラリーオーサーの割合は20.6%に上った。

見て見ぬふり? 論文のゴーストライター(2ページ目):日経メディカル

また10年前の研究と比較すると,ゴーストライターは減っていたもののオノラリーオーサーは減っていなかったそうです。最近,「どの著者がどんな貢献をしたのか」を論文の中に具体的に書かなければならない論文誌が増えてきました。オノラリーオーサーは問題視され,対策が練られているということですね。


日経の記事ではゴーストライターについてもNew York Times誌に8月に掲載された話*2を紹介しています。それによると,ホルモン剤が主力製品の製薬企業ワイス社(Wyeth社)が,8年間に渡って自社製品に有利な論文を専門の会社に書かせていたことがわかったそうです(原文ではこのような会社のことをmedical communications firm,medical writing firm,medical writing companyなどと書いています)。その総数はなんと26報です。Wyeth社のホルモン剤はかなりの売り上げがあったようですが,その後の研究により,更年期の女性がホルモン剤による治療を受けると乳ガンや心臓発作のリスクを高めることがわかりました。